最初会った時にいきなり舐められました。社長は取材中、ずっと名刺の整理をしていたのです。名刺を机に並べながら、筆者の話を聞いていました。当時はまだ大学院を修了したばかりで、若くみられた可能性があります。
ところが、何度か会ううちに態度が変わってきました。こちらの実力を認め始めました。取材内容をまとめた文章を気に入っていただけたようでした。
こうして無事に本は完成して出版しました。同友館という出版社からです。
社長さんは「ぜひ自宅に遊びに来てください」と何度も言いました。お断りするのも悪いと思い、地元のケーキ屋さんで焼き菓子を買って東京都内の社長自宅に伺いました。
出かけてみると見たこともない豪邸でした。当然のようにビルトイン・ガレージがあり、最新のポルシェ911カレラ(ドイツ)が置かれていました。色は白でした。「乗せてあげよう」と言われ、助手席に乗りました。「これからご馳走します。ラーメンは大丈夫ですか」と言われて幹線道路にポルシェを路上駐車し、安いラーメン店に入りました。入り口で食券を買うタイプです。
社長さんは食べている間中、路上駐車しているポルシェばかり見ていました。おそらく駐車違反を気にしていたのでしょう。急いでラーメンを食べて車に戻り、途中で社長さんは100円のシュークリームを買って自宅に帰ると私に出してくれました。
「仕事を頑張ってポルシェを買ったらどうですか」と言われました。こうして帰宅したのですが、単に超豪邸と最新ポルシェを見せびらかされただけでした。私がお土産に持参した焼き菓子は5000円でした。一方、ご馳走になったラーメンとシュークリームで600円でした。
こんなに懸命に本を書いて出版記念がこの待遇でした。しばらくすると、その会社は倒産しました。ニュースで知ったわけですが、結局私腹を肥やす人は最後には落ちぶれてしまう良い例です。自分だけにお金を使って、他人を下人のように扱う人間はその程度です。この点は『修身録』にも記述があります。自分は贅沢はしなくても、下人は大切にしてご馳走してあげなさい、と書かれています。
その時誓ったのは、多少豊かになっても絶対にポルシェは買わないということでした。その気持ちは今も変わりません。
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