教育の現場ではデジタル化の必要性を強調する人たちが多くいます。確かに情報機器をうまく活用できれば、その恩恵を受けることができます。特にCOVID-19で授業がすべて遠隔形式となったときには、デジタルの良さを強く感じました。
しかし、画面上で話を聴いているだけでは学習の習得度は上がりません。ノートに自分の手で文字を書きながら学ぶという伝統的な手法でしか、正確な知識は身につかないと考えるからです。学生のなかにはタブレット端末をノート代わりに使っている人も稀にいますが、試験を実施するとまったく文章が書けません。私の試験ではすべて論述式の問題を出し、成績評価「不可」もかなり出します。
学習では教える側、教わる側双方に負荷をかける必要があります。それがアナログの手法です。面倒に感じたり、非効率で生産性が低いと思ったりしても、継続すると大きな力となります。10年前に比べると学生の力が一気に下がりました。情報機器に頼りすぎるのが一因です。
また、男子学生の文字の汚さも気になるところです。きちんとした字を書く男子学生がめったにいません。普段から書いていないからでしょう。現在授業はほぼすべてがプレゼンテーションソフトのスライドに基づいて進みます(私の授業は黒板が中心)。書く機会は減る一方です。elegant handwritingは必要ないと主張するビジネス英語教育の第一人者がいます。そんなことはありません。そのような「大家」の主張を信じてはなりません。